こんばんは、クスノキです。今回はローポリでグラフィックを最低限に留め、ゲーム性の良さを伸ばす方向性が上手く機能したゲーム「BattleBit Remastered」のレビューです。
EA、DICEのバトルフィールドから多大な影響を受けたであろうこのゲームがなぜ今大人気な一方で本家本元のバトルフィールドが評価されないのかについても私の視点で考えてみます。
目次
「BattleBit Remastered」とは
基本情報
発売日 | 2023年6月15日 (アーリーアクセス中) |
ハード | PC |
開発 | SgtOkidoki, Vilaskis, TheLiquidHorse |
トレーラー
あらすじ
BattleBit Remasteredは、1サーバー254人をサポートするローポリ・マッシブマルチプレイヤーFPSです。ほぼ完全な破壊が可能なマップで、様々な乗り物でバトルを繰り広げます!
BattleBit Remastered – Steam
- 破壊可能な環境とレボリューション
- 戦車、ヘリコプター、輸送機、海上車両を使ったビークル戦闘。
- 高フレーム/秒のゲームプレイを実現するため、徹底的に最適化。
- 敵味方とリアルタイムでコミュニケーションできる近接型ボイスチャット。
- FPSゲーム用に強化されたネットコードで、1サーバーあたり254人のプレイヤーをサポートし、高いティックレートパフォーマンスを実現。
「BattleBit Remastered」ってどんなゲーム
バトルビットは私の勝手な解釈でまとめれば「ゲーム性を重視したバトルフィールド」です。
ゲーム内にはいくつかのモードがありますが、主となるモードは127vs127の大規模コンクエスト。ゲームルールやゲームの進め方などは基本的にバトルフィールドとほぼ同じです。
バトルフィールドシリーズはグラフィックが非常に優れていることやサウンド、演出面で非常に高いレベルのものを提供することで有名ですが、バトルビットはこれらの要素をほぼ捨てておりローポリゴンで作られています。
そのかわりに大規模コンクエストや各種ルールのゲームをどうすれば上手く機能させられるかを丁寧に考えて作られたゲームという印象を受けました。
このルールではロシア側かアメリカ側のどちらかのチームに分かれてマップ内の各地に配置された陣地を占領します。長い時間占領し続けて相手チームのチケットをすべて消費させれば勝利というゲームです。チケットはリスポーンするときや陣地占領中などに消費されていきます。
いかにして相手の陣地を占領するか、自チームが占領している陣地を守り抜くかという部分が頭の使いどころで楽しさに結びつきます。
兵士として参戦するプレイヤーは5種類+1種類の兵科が用意されています。兵科によって強みや弱みが異なるのでどの兵科で攻略するかを考えるのも重要な要素です。
- 分隊長
- 突撃兵
- 衛生兵
- 工兵
- 援護兵
- 偵察兵
各兵科ごとに装備できる武器が異なりアビリティも異なります。プレイヤーは最大8人の分隊に参加することができるため、分隊員とのバランスや戦況によって柔軟に変更することが求められます。
「BattleBit Remastered」のここが好き
積極的にキルを取れなくても活躍できる
一般的にFPSゲームと言われるとプレイヤースキルが物を言うタイプの作品が多いと思います。Apex LegendsやVALORANT。CoDシリーズも当てはまるでしょう。
バトルビットもプレイヤースキルが重要であることは事実ですが、これらのゲームと比較するとキルに関与せずともチームに貢献できるし活躍もできる印象でした。キルには関与できなくてもルールには関与できる。
兵科ごとに用意されている専用アビリティを活用するのが重要で特に初心者の方におすすめな兵科は「衛生兵」。キルされた味方を蘇生することができたり、体力が削られた味方を治療することができます。この蘇生ポイントや治療ポイントだけでポイントランキング上位に入れるほどです。
兵科ごとのアビリティを活用すると手軽にルールに関与できて楽しめます。
大規模コンクエストを機能させるマップ作り
バトルビット最大の魅力がこの大規模コンクエストというルールを機能させるためのゲーム作りが丁寧であるという点です。
コンクエストというゲームルールはマップ上にマップ内の各地に配置された陣地を占領し、長い時間占領し続けて相手チームのチケットをすべて消費させれば勝利というゲームです。
コンクエストというゲームルールを機能させるにはマップ作りの精巧さが自ずと求められます。これが疎かになるとただ走っているだけのゲームになってしまいます。そうなってしまったゲームに覚えがあります。
対人ゲームにおいてプレイヤーはかけひきを楽しみたいわけです。「次に取るべきポイントはどこか」「敵はここに潜んでいるのではないか」「敵がいた。どこから射線を通すと簡単にキルができるだろうか」
かけひき要素がどれだけ頻繁に種類豊富に詰め込まれているかが対人ゲームを機能させるうえでは不可欠だと思うのです。
ゲームをより没入的に楽しむ上で、リアルさを体験する上でグラフィックやサウンド、各種演出が大事であることは理解できますが、そもそもゲームを機能させるにはこのような仕組みをどれだけ丁寧に作っているかが重要です。バトルビットはそういう意味でこれらのかけひきが機能するマップが非常に多いです。
執筆時点でインディーゲームかつ早期アクセス。少人数で作られていることもあるのでしょうが、かけひきが起きづらくゲームとして機能しづらいマップもあります。
広大ながら各種に配置されたあらゆるオブジェクトにアクセス可能で、どこから攻めるか陣取るか。それらを考えながらゲームを有利に展開させるのは楽しかったです。
レベルアップが早くて新武器解除もサクサク
バトルビットは上述の通りキルに関与せずともルールに積極的に関与し仲間を助けてあげることでレベルアップのためのポイントを貰えます。
レベルアップすることで新しい武器が解除され、プレイヤーはどういう立ち回りをするかより柔軟な戦略を練られるようになるのですが、このレベルアップまでの経験値テーブルが優しめに設定されています。
どうしてもこの手の対人ゲームは装備の差が開きがちです。それはこのゲームも同様。ですが、その差を比較的早くに埋められる点や何より小気味よくレベルが上がりできることが増えていくのが楽しいです。
各種武器には武器ごとにアタッチメントが用意されています。スコープだったりマズルだったり。そういった銃のアタッチメントはその銃でキルをしなければならないためちょっとハードルは高めです。
昔懐かし?のカオス感あるゲーム内ボイスチャット
これは人によってはメリット、人によってはデメリットとも言える要素ですが、バトルビットはゲーム内ボイスチャットがにぎやかである点も売りの一つです。
敵味方問わず近くのプレイヤーが喋っている声が聞こえます。設定でオフにできますが、この都会の喧騒ともカオスとも呼べるゲームの雰囲気がどこか懐かしくて好きでした。
近くで倒された味方が助けてくれと叫んでいたり、倒した敵がうわーと言っていたり。ちょいちょい頭に血が上った人の声も聞こえてきますが、なんだか懐かしいインターネットゲームをプレイしているような感覚になります。たまに某国の国家を流しているような過激派もいるので気になる場合は各自対応すれば良いのかなと。私の経験上では他のプレイヤーに直接的に暴言を吐いているプレイヤーにはまだ出会っていません。リアクション的なFワードは頻繁に飛び交っていますが。
ゲームをプレイする以外の要素がない
良し悪しあるかもしれませんが、バトルビットは小規模で作られたゲームということも相まってかゲームをプレイする以外の要素がほぼ実装されていません。
昨今のオンラインゲームではバトルパスや有料スキン等を活用することで基本無料ゲームを成立させているわけですが、バトルビットは有料であるかわりにこれらの要素が全くありません。
今後どうなるかわかりませんがそのシンプル感が「とにかくゲームしてみて!」と言っているような気がするんですよね。
「BattleBit Remastered」がつまらないと感じる3つのポイント
相手とかけひきが起きないマップ
バトルビットは多くのマップでコンクエストというゲームルールを成立させています。
一方でやたらと走るだけの時間が長かったり、地形の有利不利が露骨になってしまうマップもあります。
かけひきが起きづらくプレイヤーが楽しいと感じる時間が少ないマップがあるということですね。
このゲームは敵に倒されてリスポーン(再出撃)する時に分隊員からリスポーンしたり占拠済みの陣地からリスポーンできるのですが、占領陣地に敵が入っていて占拠されるかもしれないという場面ではその陣地からリスポーンできない仕様になっています。
良く見れば再出撃してすぐに倒される、いわゆるリスキル防止に役立ちますが、広いマップでは陣地間の距離が長くその陣地にたどり着くまでただ無心で走り続けるだけという状態にもなります。
コンクエスト以外のルールがこれじゃない感
バトルビットにはいくつかのゲームルールが実装されていますがコンクエスト以外のゲームルールは別の作品のほうが遥かに上手く機能しています。
具体的にドミネーションというルールは「バトルビットである必要がない」と感じます。
CoDシリーズにおけるドミネーションではマップが狭く各チーム6人くらいに設定されていることもあり敵陣地のエリアをこっそり取得して最前線の敵を分散させて最前線も取れるように前線を押し込む。当然敵も同じように考えますからあっち取ってこっち取ってと東奔西走駆け回るのがドミネーションというゲームルールの醍醐味でした。
バトルビットにおけるドミネーションではマップが広すぎるためか流動性が低く敵味方が最前線で正面から撃ち合っているだけの消耗戦的なゲームになってしまっている印象です。
策を弄するにも敵陣地が遠くそこに到達する前に敵と遭遇してしまう。裏を取りたくてもなかなか取れないもどかしさがあるんですよね。これはマップが広すぎることと参加人数が多すぎることが原因なのではないかと考えています。
自分一人ではゲームをひっくり返せない大規模戦
※この項は127vs.127の大規模コンクエストが前提の話になります。32vs.32のような小規模戦での話ではありません。
127vs.127という大規模ルールでゲーム性が機能しているのは驚くべきことなのですが、どうしても一人のプレイヤーが戦況をひっくり返す、コントロールするというのが実質的に不可能です。
手薄になっている相手陣地に忍び込んで自分の陣地に塗り替えることはできてもそれを維持することは非常に難しく、また127人の敵がいるので全員が前線にいるわけでもなく前線の敵を分散させるという狙いもほぼ成功しません。
分隊レベル(8人)で連携しながら行動することができればこれらの狙いは機能するため実際にゲームを裏でコントロールしている感覚が得られて楽しいでしょう。
Apex LegendsやVALORANTのように一人で相手をなぎ倒してくような無双する快感を求めている方には合わないかもしれませんが、複数人で遊べるなら少数精鋭で相手を手玉に取るプレイもできておすすめです。
その他、改善を期待する要素
これはゲーム性の問題というよりはバランス調整や改善されると良いなという要素です。箇条書きで気づいた点を書いてみたいと思います。
- 敵と味方の視認性が悪い
- 乗り物の視認性が絶望的に悪い
- 分隊員やパーティーを組んでいるフレンドがどこにいるか分かりづらい
- クレイモアが残り続けるのでいきなり死ぬ
- 所持弾数がわからない(仕様)
- 分隊指示が出しづらい
- TABキー押すと一瞬フリーズする
- 機能すると機能しないマップの差
- マップが広すぎて駆け引きまでが長くてダレる
これらの要素の多くを変更するのか仕様とするのかはバトルビットというゲームがどういう方向性で今後進んでいくかによります。
現時点でバトルビットはリアルとカジュアルどちらに寄せるかで迷っている印象を受けます。今はどちらの要素もあり中途半端です。
いずれもリアルさを追求するならばそのままで良いでしょう。
一般的なFPSゲームでは銃の所持弾数があり、マガジンが空になったらリロードする仕組みが多いですよね。300発所持していて30発マガジンなら10回リロードできるみたいな。しかし、このゲームの仕様はマガジンを数個所持しているという仕組みなので、今マガジンに何発入っているかを確認することはできません。(ゲージである程度は分かる)
しかしながら敵に弾が当たったたときはヒットマーク及びサウンドが確認できます。
バランスといえばそうなのですが、リアルにしたいのかカジュアルにしたいのか、どちらの要素も半端にあるなという印象です。
ローポリというグラフィック特性でより親和性が高いのはカジュアル寄りというのが私見です。
バトルフィールドの親切カジュアル風味ですが、本格FPSのSQUADのような要素もある。どちらに寄せるのか寄せずにこのまま行くのかは開発がどういうユーザー層に遊んでもらいたいかによって変わりそうです。私としてはカジュアル寄りになってくれると良いですね。現状のバランスで進んでいくのかもしれませんが、今後の計画次第ではゲームの毛色が変わりそうだなと感じる部分でもあります。
「BattleBit Remastered」はどんな人におすすめ?
色々書いてみましたが私としてはとても楽しいゲームでした。主観にはなりますが「BattleBit Remastered」はどういう人におすすめできるか考えてみたいと思います。
- スプラトゥーンのように設定されたゲームルールをいかに有利に展開させるか考えるのが好きな人
- 戦況を力技ではなく戦略的にコントロールすることに喜びを覚える人
- 大人数戦闘のお祭りが好き
- Apex LegendsやVALORANTみたいに一人で多数をなぎ倒すような無双プレイを求める方には物足りない
- 大規模コンクエストというルール上一人で戦況を覆すようなヒーロープレイも難しい
- ローポリというグラフィック特性上、演出面はほぼ皆無なのでリアル系シミュレーションが好きな人
クスノキ語り
ここまで「BattleBit Remastered」のレビューをお書いてみましたがここでは私がこのゲームを通じて感じたことを簡易的にでもまとめておきます。
これまで様々な対人FPS・TPSをプレイしてきて気付いたことはプレイヤーが楽しいと感じるゲームのマップは非常に緻密に作られているのだなという点ですね。
マップの形やオブジェクトの大きさや配置場所。どこに何を置くかでどういうかけひきが起きるかが丁寧に考えられている。わかりやすいのはVALORANTであらゆるところにかけひき要素が敷き詰められています。それでも好まれるマップとそうじゃないマップはあるのですが。
ゲームへの理解を深めたい私は当然ゲームの作り手とその思考にも興味があるのですがとりわけマップ作りには興味があります。分野的にはレベルデザインかな?
御存知の通りバトルフィールドはここ数作品厳しい声が聞こえます。その声に基本的に同意します。それについては別途書く機会に恵まれれば書くとして、バトルフィールドが一般的に上手く行かずバトルビットが遊び続けられているのはゲーム性を機能させるための作りへの注力の差なのかなと感じます。
バトルフィールドという作品はある作品を契機にグラフィックや演出などいかにリアリスティックであるかという点に注力しているように映っているのですが、いかに映像がリアルであろうとそこで行われるのは対人のゲームであるため、どういう駆け引きが行われるかという点が機能しないとユーザーはクセになる要素がないのではないでしょうか。
最近のバトルフィールドのようにグラフィックや演出でゲーム性の粗さを補うような作品は大衆的になり対象ユーザー数は増えますが、対人ゲームの醍醐味とも呼べる”かけひきゲーム”がしたい人にとっては物足りなくなるのかなという印象です。
同時にバトルビットはそういう要素を捨ててゲーム性で勝負しているため、ゲーム性が合わない人にはバトルフィールド以上につまらないと感じるかもしれないなと思いました。
おわりに
- 大規模コンクエストを機能させるゲーム性への注力
- 初心者でも活躍できるアビリティシステム
- スピーディーなレベルアップ
- 懐かしさを覚えるゲーム内ボイスチャット
- 支払いは買い切りのみ(課金等なし)
- マップによるクオリティのばらつき
- コンクエスト以外のルールが微妙
- リアルとカジュアルのちぐはぐ感
以上「BattleBit Remastered」のレビューでした。
※レビューは2023年7月時点でのものになります。