こんばんは、クスノキです。今回は「龍が如く7 外伝 名を消した男」のレビューです。
当記事はこれまでの龍が如くシリーズ及びジャッジアイズシリーズをプレイした一人のユーザーのレビューになります。
基本ストーリーのネタバレはありませんが、注意してほしい箇所にはネタバレ注意のラベルを張っています。記事中に2箇所あります。
例:ネタバレ注意
目次
「龍が如く7 外伝」とは
基本情報(発売日・ハード・開発等々)
発売日 | 2023年11月09日 |
ハード | PS5/PS4/Xbox Series X/S/Xbox One/Steam |
開発 | SEGA(龍が如くスタジオ) |
トレーラー
あらすじ
あと何を失えば、
ーー大切な人を守れるのか愛する者たちを守るため自分の死を偽装し、
人生を捨てた伝説の元極道、桐生一馬。
そんな中・・・現れたのは謎の一団。外部の者が誰ひとり知るはずのなかった取引は中止を余儀なくされ、
混乱のさなか、奇遇にも謎の一団は桐生一馬の生存を嗅ぎつけてしまったようだった。
そのまま現場から姿を消した彼らを放っておくわけにはいかない。
かくして世を捨てたはずの桐生一馬は、再び裏社会の渦中へ足を踏み入れていくのだった・・・
龍が如く7外伝 名を消した男 – SEGA
「龍が如く7 外伝」のここが好き
サブストーリーへの導線が機能している
龍が如くシリーズは魅力的なメインストーリーだけでなくサブストーリーの面白さも人気な要素の一つです。今作でもサブストーリーは変わらず用意されていますが、従来と違うのはメインストーリーからサブストーリーへの導線が機能しているという点です。
従来のサブストーリーは街中をうろつくとサブストーリーが発生するエンカウント式でした。そのため、メインストーリーを進めていたプレイヤーがサブストーリーにも手を伸ばそうとする導線が上手く機能していなかった印象です。メインの話を知りたいプレイヤーはサブストーリーにほとんど触れずにクリアできてしまう、メインからは切り分けられた要素という印象が強かったです。
一方で今作「龍が如く7 外伝」では新たに登場する赤目(CV:ファーストサマーウイカ)というキャラクターを通してサブストーリーを受注する方式に変更されています。赤目はメインストーリーにも関与するキャラクターなのですが、メインストーリー進行の過程でサブストーリーをクリアするように求められます。
サブストーリーをクリアすることでプレイヤーは桐生を強化するための金銭とポイントを稼ぐことができる仕様になっており、より強い桐生一馬(浄龍)を作り上げようとするとサブストーリーをクリアしていく必要があります。
サブストーリーをクリアすることで桐生を強化できる点は従来と変わらないのですが、サブストーリーもクリアしましょうねというゲーム側からのアプローチが親切でそのメリットをプレイヤーに自然に伝えます。これによってメインストーリーとサブストーリーが切り離された要素ではなくなった印象を受けました。
元々ゲームは隅々までプレイするよ!という層にはあまりピンとこないかもしれませんが、目立った美味しそうな要素を遊ぶスタイルの筆者にはこの変化がとても良く映りました。
「エージェント」が爽快感抜群
「龍が如く7 外伝」のバトルスタイルは龍が如く6のようなアクションゲームとなっており、「龍が如く7」のターン制バトルとは異なります。
今作のバトルスタイルは「応龍」と新しい「エージェント」の2種類から場面に応じて使い分けます。応龍は龍が如く6のバトルスタイルと同じドラゴンエンジンにおける喧嘩スタイルです。
新しく実装された「エージェント」は桐生一馬ではなく大道寺一派のエージェント「浄龍」として身につけた「大道寺式 活殺術」となっており、古今東西の格闘術を取り入れた技術体系と”ガジェット”を組み合わせたバトルスタイルです。ガジェットには「蜘蛛」「蛇」「蛍」「蜂」の4種類があります。
蜘蛛
蛇
蛍
蜂
この「エージェント」はスピード感のある爽快アクションが基本となっており、数の多い敵を相手にするときに活躍するバトルスタイルです。龍が如くスタジオの別シリーズ、ジャッジアイズシリーズで八神が扱う「演舞」に似た爽快感を桐生一馬の形で実現しています。
筆者の場合は物語中盤までは良く使いましたが、物語後半にかけてからはあまり使わなかったですね。アクションの爽快感は抜群。性能を見ると重点的に強化しないと特にダメージで応龍に負けます。
バトルスタイルに関することは後の項「「エージェント」を使う機会が減る一方」でも書いています。
シリーズファンが喜べるサブストーリーや演出がある
サブストーリーには豊富なものが多くありますが、中にはこれまでの作品を遊んでいる人が「おっ!」となるような内容のものもあります。また、メインストーリー上にもファンが喜ぶような演出があります。外伝ですから本編を遊んでいるユーザーを主軸に作っているようです。
テンションが上がる場面はいくつかありましたが、その中から一つ紹介するとサブストーリーに「八神探偵事務所」が登場します。龍が如くスタジオのリーガルサスペンスアクション「ジャッジアイズシリーズ」に登場する主人公、八神の探偵事務所です。ゲームはキムタクが如くなんて呼ばれていましたね。
そんな同スタジオの別シリーズが交わるサブストーリーが用意されています。しかも関西、蒼天堀で。
もしかするとジャッジアイズシリーズに次作があれば関西での話も展開されることを示唆しているのかもしれませんね。真相はわかりかねますが、ファンとしては心躍ります。
他にもAKIRAの有名なシーンのオマージュシーンがありましたよ。
「龍が如く7 外伝」がつまらないと感じる3つのポイント
動き回れる都市が実質一つ
今作はあくまでも「龍が如く7」を補完する位置づけにあたる外伝作品。ストーリー背景の都合上仕方がないことですが、プレイヤーが動き回れるエリアが実質的に蒼天堀の一つだけです。
ストーリー序盤に浄龍は龍が如く7のホームタウンとなった横浜・伊勢佐木異人町を調査するために動き回れますが、早々に蒼天堀に移動し以降はストーリークリアまで動き回れる町は蒼天堀だけになっています。
メインストーリーにも関与してくるサブコンテンツ「キャッスル」はそれなりに広いですが、街中をうろうろするのとは位置づけが異なります。
「龍が如く7」本編では神室町・蒼天堀・伊勢佐木異人町の3都市が登場し、それぞれにサブストーリーが用意されていました。それと比べると寂しさを感じます。
宇喜多戦がただのストレス
短く済ませましょう。物語が進むとモブキャラの一人で宇喜多という名前の敵と戦います。面白くないです。
宇喜多は拳銃で攻撃してくるタイプの敵ですが、撃っては距離を取り、撃っては距離を取りの繰り返し。近づけば逃げて打つ。
銃で撃たれると倒れるモーションが入ります。これが鬱陶しいんです。操作を受け付けず何もできない時間が長いんです。
普通のモブキャラから撃たれても倒れるモーションは入っていたと思いますが、とりわけ宇喜多戦は強烈に記憶しています。
プレイヤーが何もできず傍観するしかない時間が長いのが嫌ですね。
「エージェント」を使う機会が減る一方 ネタバレ注意
「龍が如く7 外伝」で新たに実装されたバトルスタイル「エージェント」を使ったのは物語の中盤までで後半はほとんど使う場面がありませんでした。敵が大勢いるときにアルティメットヒートモードで攻撃するのみで、それ以外の場面では「応龍」が強すぎて積極的にエージェントを活用する機会がありませんでした。
これはプレイヤーに委ねられている能力強化の個人差によって如実に感じる人、そうでもない人でわかれそうですが、筆者の場合はバランスを見ながら強化したものの応龍が強すぎるなと感じました。
今作では多くの敵と同時に戦います。その点で開発の「エージェント」を使ってほしいという意図を感じ取れます。しかし、プレイヤー目線で見ると応龍が強すぎてその意図に沿わないプレイスタイルになりがちなのかなと感じた次第です。
※以下この項目の終わりまでストーリーネタバレ注意
一方で多用するバトルスタイルが「エージェント」から「応龍」へと移り変わっていくことはストーリー進行の兼ね合いを見ると自然に見えました。
「龍が如く7 外伝」は龍が如く6~龍が如く7の終わりまでの時間軸で物語が進行します。龍が如く6の話を経て桐生一馬は表舞台から姿を消し、世間の認識では既に死亡しています。しかし、実際には密約を交わした大道寺一派のエージェント「浄龍」として生きており、今作では浄龍として物語を追うことになります。
ところがと言うべきか、やはりと言うべきか。桐生一馬が浄龍として生きていても関わる人達は桐生一馬の死を許しません。そうしていつものように事件に巻き込まれるのですが、物語が進むに連れて徐々に浄龍としての自分と桐生一馬としての自分に葛藤があります。桐生一馬としての人生を捨てきれていないとも言えますね。
この心の移ろいがバトルスタイルにも現れるように調整しているのだとすれば、スタンディングオベーション。素晴らしいの一言です。
深読みであったとしてもそういう移ろいを感じ取りながら遊べた点ではエージェントを使う機会が減っていたことにも筆者は満足しています。
感情的には満足、ゲームとしての批評としてはバランス調整の必要性ありといったところでしょうか。
「龍が如く7 外伝」はどんな人におすすめ
「龍が如く7 外伝」はその名の通り「龍が如く7」ありきの作品です。ゲームとして楽しむ上では外伝から始めても良いですが、物語を理解したり感情的な没入感を得るには「龍が如く6」と「龍が如く7」は遊んでおいたほうが良いと感じました。
ファンを喜ばせる細かな演出を見逃さずに享受するのであれば「龍が如く極2」「龍が如く5」「龍が如く6」「龍が如く7」「ジャッジアイズもしくはロストジャッジメント」等をプレイしていると良いでしょう。
「龍が如く7 外伝」は「龍が如く7」本編で起きている様々なトラブルの裏で実はこういうことが起きていましたという話です。7ファンはより深く楽しむことができるのでおすすめです。
クスノキ語り
龍が如く7 外伝は遊び始めてからプレイヤーが動かせるようになるまでがとても早く、それでいて作品の世界観や雰囲気をプレイヤーに理解させる導入がとても円滑でした。これは龍が如く7本編でも気づいた点です。最近は導入の説明がやたら長くプレイヤーが退屈してしまう作品が減っている印象を受けます。物語に引き込まれた後であれば長いムービーも見ごたえあるものとして受け入れられますが、序盤にこれをされると感情移入できないんですよね。
字幕変更
遊んでいて最初に気がついたのは字幕の規則が変更されていることです。(改めて確認すると過去作でもその向きはあったようです)
これまでは音声のセリフと字幕が一致するように作られていましたが、今作はより業界用語を排した字幕になっていました。
龍が如くはヤクザ者の話なので組長のことを「オヤジ」と呼んだり、若頭のことを「カシラ」と言ったりします。
しかし今作ではセリフ上オヤジと呼んでも字幕にはその人の名前で表記されるようになっています。
※画像の字幕では「組長」と表記、セリフでは「オヤジ」
字幕表記がユニバーサルデザインを意識したものになったというのでしょうか。その世界観に精通していない幅広いユーザー層に受け入れられやすい形になっている点が印象的でした。
名前を亡くすということネタバレ注意
※以下この項目の終わりまでストーリーネタバレ注意
今作では桐生一馬は死亡しており、浄龍として振る舞うことが要求されます。本人はその気でも様々なトラブルに巻き込まれていくうちに周りは桐生一馬の死を頑なに認めません。桐生本人もその死を受け入れることに葛藤が生じているようでした。
戸籍の上で死亡を認められていてもその家族や周りはその死を受け入れておらず、本人も生きながらにして死を受け入れるという意味を理解できていないようでした。
最愛の存在を認識できるのに会うことが許されない。まさに生殺し。すべてを俯瞰で見られるプレイヤーとしても想像するだけで胸が痛く、作中の桐生もそれを少しずつ実感し苦しみを抱いているように映りました。それでも極道としての筋を通すのが皆が愛した桐生一馬なのですが、そうした苦しみから距離を取るようにあえて頑固な判断を下す様子が泣かせます。
最後のムービーシーンは必見です。あの背中とあの姿を見られただけで満足です。桐生一馬は堂島の龍という鎧を最後に脱ぎ、父親として普通の人間として事実に向き合う姿が素晴らしかったです。
今作では誰かから誰かに向けた愛を感じられる場面が多くありました。桐生一馬から誰かに、誰かから桐生一馬に。
おわりに
- サブストーリーへの導線が機能している
- 「エージェント」が爽快感抜群
- シリーズファンが喜べるサブストーリーや演出
- 動き回れる都市が実質一つ
- 宇喜多戦
- 「エージェント」を使う機会が減る一方
以上、「龍が如く7 外伝 名を消した男」のレビューでした。